日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
果実およびそ菜類のタンニン成分
(第10報)不溶性ポリビニールピロリドン(ポリクラールAT)によるポリフェノールの吸着
中林 敏郎
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1972 年 19 巻 2 号 p. 84-90

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抄録

不溶性のPVPiによるポリフェノール成分の吸着除去を検討した結果,
(1) カテキンとタンニン酸の吸着はpHの影響をほとんど受けないが,アントシアンはpH5以下で吸着が著しく低下する。
(2) 吸着はカテキンは50°,アントシアンは30°で最高となり,その前後の温度で低下するが,タンニン酸は50°以上で急増する。
(3) カテキンとアントシアンの吸着はニタノールや芒硝の共存で阻害されるが,タンニン酸はエタノールや蔗糖の共存でかえって吸着量が増える。
(4) 水溶性の除タンニン剤と異なり,PVPiはカテキン,アントシアン,ナリンギンなど低分子ポリフェノールをよく吸着するが,タンニンはその分子量が大きいほど吸着が悪い。
(5) イチゴとブドウ果汁はPVPi処理でアントシアンが除去されてよく脱色する。
(6)各種のポリフェノールを含むタンニン抽出液をPVPi処理すると,低分子ポリフェノールが優先的に除去されてタンニンが残留する。
(7)PVPiに対する低分子ポリフェノールと高分子タンニンの吸着機構の相違について考察と推論を行った。

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