抄録
分離グルテンよりユバ状皮膜を生成する条件と,生成した皮膜の性質,とくに強伸度について検討し,次の結果を得た。
(1) グルテンからユバ状皮膜を生成するにはpH10.2~12.5のアルカリ性溶液,pH4.9~2.2の酸性溶液,3.3~4M尿素溶液あるいは0.25~0.5% DBS溶液など,グルテンが溶液中で均一に溶けて,かつ表面での分子間の結合を妨げないことが必要である。なお,溶解条件によって膜質はそれぞれ異なる。
(2) S-S結合の還元剤とされているメルカプトエタノールを添加することにより,アルカリ性溶液からの皮膜は強度を若干低下させるが,尿素溶液からの皮膜は強度を著しく増大させ,かつ伸度を小さくする。
またSH基修飾試薬を溶液に添加することにより皮膜強度は低下し伸度は増大する。
(3) グリアジンとグルテニンの両区分の間には各処理条件によって皮膜強度,伸度,透明度など膜質に明らかな差がみられる。