日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
温州みかん果汁の凍結濃縮における氷結晶成長
山沢 新吾吉崎 繁前川 孝昭丹 信吾佐俣 純
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1975 年 22 巻 7 号 p. 331-336

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抄録

本報は,果汁の凍結濃縮について氷結晶成長の観点から,一次元方向の伝熱による果汁の氷結につき,氷結長さ,氷結果汁の結晶形および結晶成長界面,に関して顕微鏡観察を行ない,若干の検討を試みた。得られた結果を示せば,以下のとおりである。
(1) 果汁の氷結は,STEFANの理論式からも知られるような純水の氷結とは異なり,氷結果汁成長界面には氷結果汁成長界面には氷結晶の成長が一時停滞する第一期平衡氷結長さの存在を確認した。
(2) 果汁の凍結操作においては,未氷結果汁は濃縮されず,果汁中の水が氷結し,この氷結晶間に果汁成分が取り込まれた状態になるにすぎない。
(3) 果汁の氷結長さLは,冷却時間θ,冷却温度差ΔT,果汁糖度C,第一期平衡氷結長さLMの関数で表わされ,その実験式は,L/LM=tanh aθで示される。ここで,LM, aは実験より求められ,ΔT, Cの関数である。
(4) 凍結操作条件の違いによる結晶形の違いは,冷却温度差が大きいほどこまかな結晶が得られ,さらに果汁濃糖度の高いものほどこまかな結晶が得られた。なお,緩慢冷却すると,40, 50°Bxなど高濃度果汁は,樹枝状の結晶を析出させることが観察された。

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