日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
味噌の香気成分に関する研究
(第4報)加熱に伴う揮発性カルボニル化合物の生成における味噌成分の役割
岩渕 せつ子佐藤 光子柴崎 一雄
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1977 年 24 巻 2 号 p. 65-71

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抄録

(1) 仙台味噌浸出液を限外濾過,イオン交換樹脂により吸着区分と非吸着区分に分画し,これらのフラクションの揮発性カルボニル生成に対する役割について検討した。
(2) 吸着区分と非吸着区分を単独で加熱した場合, (i)生成されるカルボニル量は吸着区分/非吸着区分=約3/2の比率であった, (ii)定性的に,吸着区分からアミノ酸由来のアルデヒドが,非吸着区分(AbおよびAb′)から糖由来のフルフラールが検串された, (iii)吸着区分からアルデヒドの生成する反応は長時間にわたって進行したが,非吸着区分からフルフラールの生成する反応は短時間で停止した, (iv)吸着区分から肉汁様香気が,非吸着区分のうちAbからマルトール様の甘い香気が生成した。さらにAbとAb′の挙動の相違から,マルトール様香気の前駆物質が3-DG区分(Ac)に存在していると考えられた。
(3) 吸着区分と非吸着区分を再混合した系を用い,AbとAb′の役割を比較検討した結果, (i)揮発性カルボニル生成量,着色,加熱香気の生成などの点でAbがAb′を上回ったことから3-DG区分(Ac)の役割が重要であること,また(ii)3-DGの消長とフルフラール生成との相関から味噌の加熱に伴う現象を把握する上で3-DGを指標とすることが有効であることを示唆した。

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