日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
野菜の貯蔵中の硝酸塩含量の消長と生体内の代謝活性との関係
園芸食品の硝酸亜硝酸塩に関する研究(第9報)
畑 明美茶珍 和雄緒方 邦安
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1979 年 26 巻 4 号 p. 180-188

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抄録

ホウレンソウとカボチャについて貯蔵中の硝酸塩の挙動と関連して硝酸還元酵素活性,亜硝酸還元酵素活性および生体内の代謝活性の変化について検討した。さらにホウレンソウを用いて貯蔵中に硝酸還元酵素活性を保持させることにより硝酸塩を減少させる方法についても調べた。
(1) ホウレンソウでは貯蔵中硝酸塩含量は大きな変化はなかったが,硝酸還元酵素活性は著しく減少したのに対し,カボチャでは硝酸塩含量は著しい減少を示し,しかも硝酸還元酵素活性は漸増し,貯蔵後期ではとくにその傾向が顕著であることを認めた。
(2) 亜硝酸還元酵素活性の貯蔵中の変化はホウレンソウ,カボチャいずれもほとんどみられなかった。
(3) 硝酸,亜硝酸還元酵素の活性に必要なNADH,NADPHの供与に関係すると考えられる生体内の数種の脱水素酵素およびグルタミン合成酵素活性について,貯蔵中の両材料で比較したところ,ホウレンソウではグルタミン酸脱水素酵素を除いて,グルコース・6・リン酸脱水素酵素,グリセルアルデヒド・3・リン酸脱水素酵素,イソクエン酸脱水素酵素,リンゴ酸脱水素酵素,リンゴ酸酵素ならびにグルタミン合成酵素はいずれも貯蔵中その活性が減少するのに対して,カボチャではグルタミン合成酵素を除いて,これらの酵素活性が増大し,両者間で明らかな代謝活性の相違が認められた。
(4) ホウレンソウを用いて環境ガス組成,アルコール類および生理活性物質の処理により,貯蔵中の硝酸塩含量ならびに硝酸還元酵素活性におよぼす影響をみた結果,ポリエチレン包装および100%炭酸ガス処理では硝酸塩含量に変化がなかったが,窒素ガス100%処理の葉身部でその含量が減少し,硝酸還元酵素の活性もかなり保持された。ただし亜硝酸塩の集積が認められた。
(5) ホウレンソウにアルコール類,生理活性物質の処理を行ったところ,N-プロピルアルコール1%処理,N6-BAおよびC-AMP 0.1mM処理で硝酸還元酵素活性の減少が軽減されることを認めた。

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