日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
大豆蛋白質のゲル形成性ならびに保水性に及ぼす加熱変性の影響
古川 忠康太田 恵教
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1981 年 28 巻 8 号 p. 451-456

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抄録

大豆分離蛋白質の製造において採用される加熱処理の効果を考察するために,大豆酸沈殿蛋白質の加熱変性と機能性発現との関連性について検討し,次に示す結果を得た。
(1) 酸沈殿蛋白質溶液を70℃以上に加熱すると,ゲルロ過法による会合体生成率は加熱温度,蛋白質濃度の上昇によって増大することを認めた。またこの加熱処理溶液は構造粘性を示し,網状構造の形成がみられた。会合体生成を促進すると見かけの粘度は上昇,一方,指数法則による流動指数は低下し,網状構造の形成は会合体の生成とよく対応した。
(2) 酸沈殿蛋白質溶液を加熱処理後噴霧乾燥して調製した分離蛋白質の保水性ならびに加熱ゲル形成性と会合体生成率との間には正の相関がみられた。これら両特性の発現には,分子会合による網状構造形成が関与するものと考えられ,高保水性ならびに高ゲル形成性を得るには,予め全蛋白質の約50%以上を会合体化しておくことが必要であった。

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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