日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
大豆レシチンによるモデルエマルションの安定性
山野 善正鶴 敏之杉原 史朗三木 英三
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1982 年 29 巻 5 号 p. 265-270

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抄録

1) 大豆レシチンを予め油に分散した方が,予め水に分散して調製したエマルションより安定性が高く,また,両法でレシチン濃度が高いほど安定性は高くなった。
2) 油に予めレシチンを分散して得たエマルションでは,レシチン濃度が高いほど,静的及び動的安定性は高く,静的法では25℃でレシチン5%以上で2週間,相分離は全く見られなかった。動的法では,10100G(30℃)で,遠心時間が長いほど不安定となったが,レシチンが1%を越すと急激に安定性は増した。
3) 酸沈澱大豆タンパク質は,レシチンの乳化安定性を向上させた。
4) レシチン0.5%添加のエマルションに対して,C1~C7のn-アルコールを2%添加すると,その安定性は向上し,炭素数が多いアルコール添加の試料ほど安定性は高くなった。
5) レシチンを予め水に分散して調製したエマルションに対して,塩化ナトリウム(NaCl)添加量と安定性の間には極小点が存在し,レシチンとNaClの化学当量点とみなせるNaCl濃度で安定性が最も低くなり,当量点での電荷の逆転による油-水界面での配列状態の変化が推定された。一方,レシチンを予め油に分散して得たエマルションでは,NaCl量が多くなるほど安定性は低下し,前述の場合とは異なる効果が推測される。

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