日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
凍結・融解を反復して作製したポリ(ビニルアルコール)-ゼラチン混合ゲルのレオロジー的性質
渡瀬 峰男
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1984 年 31 巻 1 号 p. 38-43

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抄録
15% w/w PVAおよび5% w/wゼラチン水溶液を混合した溶液について,凍結・融解を反復した場合,ゲルの性質は両者の混合比によって変化した。これらのゲルについて動的粘弾性測定を行った。その結果は以下の通りである。
(1) PVAの体積分率が0.5以上では,PVAの体積分率および温度のサイクル回数の増加とともにE'およびゲルの融解温度はともに著しく増大した。これらの傾向は再現性が見られた。
(2) 温度のサイクル回数が少ない場合,ゲルは粘着性を示した。しかし,サイクル回数が増加するとゲルはゴム状弾性を示し,機械的強度が著しく増大した。
(3) PVAの体積分率が約0.2~0.4の範囲では,上層にPVA,下層にゼラチンのゲルに分離し,そのゲルの体積の割合はPVAの体積分率の変化とともに変った。
(4) PVAの体積分率が約0.1付近から,ゲルは離水してキセロゲルになった。
(5) (1)の混合ゲルは水中に浸漬した場合,ゲルの重量およびE'の変化はほとんどなく,これらのゲルを引張った場合,ゲルの切断時の長さはもとの長さの約3倍に達した。さらに,これらのゲルは加工が容易であり,水中に浸漬した場合,長期間腐触が見られなかった。
これらの結果から,PVAの体積分率が0.5以上では,温度のサイクル回数の増加につれてE'が増大したことはPVAの水素結合による微結晶構造の形成が主要因であると考えられる。
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