日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
イワシ揚げかまぼこ中の油脂のガンマ線照射および貯蔵による変化
ガンマ線照射揚げかまぼこの成分変化(第4報)
奥 忠武
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1984 年 31 巻 3 号 p. 174-179

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抄録
マイワシを主原料とした揚げかまぼこのガンマ線照射およ貯蔵中に生ずる油脂の変質を調べるために,揚げかまぼこを含気包装し3kGyの照射を行なった。抽出油脂の脂肪酸組成,諸特性(IV,AV,POVおよびTBA値)および総菌数の測定をした。結果は以下の通りである。
(1)照射による揚げかまぼこ中の油脂の脂肪酸(18種)組成および諸特性の変化は僅小であった。
(2)30℃貯蔵区では,照射および非照射試料とも18種脂肪酸中,飽和および大半のモノエン酸は21日間変化しないか,あるいは僅かの変化であった。しかし,試料中に含量の少ない不飽和のC16:1,C17:1,C20:3,C20:4ω6およびC22:5酸は貯蔵中に消失した。不飽和のC22:6,C20:5,C18:3およびC18:2酸は大きな減少を示した。また,両試料のPOVとTBA値の増加速度は速く,油脂の劣化の進行が顕著であり,総菌数の増加も短期間で急激で,外観の異常や異臭の発生も認められ食用に不向と考えられた。
(3)10℃貯蔵では,非照射試料中の油脂の劣化は21日間を通じ大きくないが,総菌数は7日以降急増し,10日以降に外観の異常や異臭の発生が認められ,食用に不適と推定された。照射試料では,56日目においても油脂の劣化は僅かであり,総菌数の増加も少なく,外観の異常や異臭の発生も全く認められなかった。すなわち,マイワシを主原料とした場合もスケトウダラ主原料の場合とほぼ同様に,照射と低温貯蔵の併用効果の大きいことが明らかであった。
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