日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
柿果汁のアルコール発酵過程における成分変化
三社柿の利用に関する研究(第2報)
中川 秀幸中嶋 實山下 市二青木 章平
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1986 年 33 巻 11 号 p. 786-790

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抄録

脱渋した三社柿の果汁を用いて,柿酢製造のためのアルコール発酵を行い,発酵過程中における有機酸組成,糖組成および遊離アミノ酸等の変化を調べた.
(1) 脱渋した三社柿から調製した果汁(屈折計示度12)に予め前培養したワイン酵母を5%接種してアルコール発酵を行ったところ,25℃, 3日間で発酵がほぼ終了し,エタノール濃度は6.2% (w/v)となった.
(2) 有機酸は,脱渋,凍結果汁中にはリンゴ酸およびガラクチュロン酸が比較的多く含まれていたが,発酵初期にリンゴ酸は急激に減少した.また,ガラクチュロン酸は徐々に減少した.
(3) 脱渋,凍結果汁中では,グルコースおよびフルクトースが主要な糖成分であり,ほぼ等量含まれていた.アルコール発酵過程においては,グルコースの方がフルクトースより優先的に消費された.
(4) 脱渋,凍結果汁中には,γ-アミノ酪酸およびグルタミンが遊離アミノ酸として多く含まれていた.大部分のアミノ酸は発酵過程中に減少したが,プロリンだけは逆に増加し,発酵開始後6日目には全遊離アミノ酸の67%となった.
(5) 発酵開始後6日目の果汁について食味を調べたところ,脱渋はほぼ完全で渋味は感じられず,軽い口触りで若干の酸味があった.色彩は,黄色味を帯びた橙色であったが,わずかに白濁していた.

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