日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
初生ヒナひき肉の酵素分解と生成物の有効利用
堤 将和森 佳光金田 弘挙
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1986 年 33 巻 11 号 p. 791-797

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抄録

産卵鶏初生ヒナ(雄)の有効利用の一方法として,これよりチキンエキスを調製した.まず高い窒素含量のエキスを得るため,二三の基礎的実験を行った.
(1) 熱水抽出の前処理として,タンパク質分解酵素によるひき肉の酵素分解を試みた.この際ひき肉けん濁液の防腐のため,数種の抗菌剤の効果を検討し,1%グリシンと3%塩化ナトリウムの併用が防腐剤として適当であることを明らかにした.
(2) 酵素分解の条件について検討した.その結果,ひき肉中の各種加水分解酵素の活用,豚の肝臓,すい臓,腎臓の混合ホモジネートの添加,市販のタンパク質分解酵素の併用により,原料ひき肉の総窒素の約82%が非タンパク質態窒素として可溶化した.
(3) 以上のような結果を基に,ひき肉からチキンエキスを調製した.得られたエキスはフレーバーの生成が悪く,そのままでは調味料として不適当であったので,微生物用培地としての利用を試みた.チキンエキス培地はグラム陰性菌(Escherichia coli, Proteus vulgaris)用培地としてとくに栄養素の補足は必要でなかったが,グラム陽性菌(Bacillus subtilis, Staphylococcus aureus)用培地としては酵母エキスなど栄養素の補足が必要であった.酵母(Saccharomyces cerevisiae, Saccharomyces rouxii)用培地としてはグルコースの補足が必要であった.

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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