日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
限外濾過法による温州ミカン果汁の清澄化
福谷 敬三小川 浩史
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1986 年 33 巻 2 号 p. 108-116

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抄録
限外濾過法による温州ミカン果汁の清澄化について,DDS社製限外濾過膜GR 51 PP, GR 61 PPおよびGR81 PPを使って検討した.
(1) 限外濾過の操作条件と透過流束の関係について検討した.流量および液温を高くすると透過流束は増加した.操作圧については,GR 51 PP, GR 61 PPでは圧力の増加に伴い透過流束の減少がみられたが,GR 81 PPでは圧力の増加に伴い透過流束の増加がみられた.
(2) 温州ミカン果汁を限外濾過した後の膜モジュールの洗浄法としては,アルカリ性洗剤を含んだ50℃~60℃程度の溶液が有効であった.
(3) 10°Bx, 20°Bx, 30°Bxの温州ミカン果汁を供給液として回分処理による限外濾過を行った.果汁成分のうち,可溶性固形物,酸,アミノ態窒素は僅かに透過が阻止され,保持液中のこれらの成分の濃度は増加した.清澄果汁には,ペクチンはほとんど検出されなかった.供給する果汁の濃度が高いと透過流束は低いものの,膜を透過する可溶性固形物量は多く,可溶性固形物を多く透過させ得るという観点からは,濾過はより効果的であった.
(4) 限外濾過の透過流束を高めるために,温州ミカン果汁を用いてペクチン分解酵素剤による前処理を検討した.適量のペクチン分解酵素剤の添加による前処理は,透過流束の増加に有効であった.
(5) 限外濾過法による清澄果汁は,珪藻土濾過法によるものに比べて,果汁成分には大差はみられず,香味,色調のやや良いものが得られた.
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© 社団法人 日本食品科学工学会

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