1986 年 33 巻 4 号 p. 227-231
穀粉ゲルの硬化抑制に対する各種酵素(α-アミラーゼ,β-アミラーゼ,グルコアミラーゼ,パパイン)の添加効果を検討した.
(1) 米粉及び小麦粉のアミログラム最高粘度は酵素の添加により低下したが,中でもα-アミラーゼの影響が一番大きく,β-アミラーゼの影響が一番小さかった.またパパインは小麦粉により大きく影響し,β-アミラーゼは米粉により強く影響した.
(2) 米粉ゲルに対する酵素の硬化抑制はβ-アミラーゼは他の酵素よりも多くの添加量が必要であるが,製造直後のゲルのゲル強度は酵素の無添加のゲルとくらべて差が少なく,かつ保存中のゲル強度の上昇が遅く,硬化の抑制効果が顕著であった.一方,α-アミラーゼ,グルコアミラーゼは添加することによってゲル強度の低下をもたらし,ゲル強度の上昇抑制効果はあるものの,製造後の粘弾性を変えずに硬化抑制をはかるという点からみると,好ましい添加効果でなかった.またパパインの効果は非常に弱かった.
(3) 小麦粉ゲルに対してはα-アミラーゼの添加は非常に低濃度でもゲル強度の極めて低いゲルとなった.他の酵素では,β-アミラーゼ,パパインにわずかな硬化抑制効果がみられた.
(4) 小麦粉ゲルの硬化抑制に対するβ-アミラーゼ,パパインの併用効果を検討したが,顕著な効果はみられなかった.(5) 高水分系穀粉菓子への応用としてβ-アミラーゼをういろうに添加した結果,0.05%の添加で著しい硬化抑制効果がみられた.