日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
三社柿から分離した酢酸菌による柿酢発酵過程の成分変化
三社柿の利用に関する研究(第3報)
中嶋 実中川 秀幸本江 薫山下 市二青木 章平
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1987 年 34 巻 12 号 p. 818-825

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抄録

脱渋した三社柿の果汁をアルコール発酵したもの(柿果汁アルコール)を原料として,三社柿果実から分離・選抜した酢酸菌2株及びTypeculture1株を用いて柿酢発酵試験を行い,発酵過程中の有機酸,アセトイン系化合物及びアミノ酸等の変化を調べた.
(1)エタノール濃度を5%に調整した柿果汁アルコールに3種類の酢酸菌を接種して,28℃で静置発酵したところ,18~24日で酢酸濃度4.7%以上の柿酢を得た.
(2)A-33及び対象菌の醪濁度は高かったが,A-114の醪は濁度が低くほぼ清澄であった.
(3)醪中の乳酸,コハク酸及びリンゴ酸は酢酸菌により資化されて減少したが,とくに発酵初期の減少が著しかった.全期間を通じてクエン酸の変動は小さかった.
(4)いずれの醪も発酵中の2,3-ブタンジオールの変動は小さかったが,アセトイン及びダイアセチルは著しく増加し,発酵24日目で前者は10倍以上,後者は約2~3倍となった.アセトインの顕著な増加は,柿果汁アルコールに含まれる2,3-ブタンジオールの酸化によるものではなく,主として有機酸等の分解生成物及びアセトアルデヒドの縮合によるものと考えられる.
(5) 醪中の遊離アミノ酸は発酵過程中に減少したが,対象菌よりも分離菌の方が減少割合が高く,減少するアミノ酸の種類も多かった.
(6) 24日目の発酵液はいずれも日光臭が抜け,むれ香は米酢に比較すると少なく,味もまろやかに感じられた.
(7) 水溶性タンニンは還元糖,総窒素は全期間を通じて少かった.

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