日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
大豆トリプシンインヒビターの加熱によるトリプシン親和性の変化
棚橋 勝道高野 克己松本 信二鴨居 郁三小原 哲二郎
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1988 年 35 巻 8 号 p. 541-544

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抄録
トリプシンの基質(BAPA)に対するKm値を2倍にするTI力価をLINEWEAVER-BURKのプロットより求め,これをKt値として加熱されたTIのトリプシン親和性の変化および大豆加工食品中に残存するTIのトリプシン親和性について試験し,以下の結果を得た.
(1) 食品加工用の中国大豆よりDEAE-celluloseにより分画した5種のTIについてKt値を測定したところKt値には差異が見られ, CB-1, CB-2は約15~19unit, CB-3, CB-4は約30unitであったが, CAは約100unitと最も親和性が低かった.
(2) TIを100℃, 15分間加熱処理した後のKt値は,未加熱TIに比べてCB-4 (1.5倍)以外はいずれも1.1倍と,トリプシンに対する親和性の低下は僅かであった.しかし, 11Sを添加して加熱した場合は, Kt値がCB-4では5倍となり親和性が大きく低下し,その他のTIもKt値は1.5-1.9倍を示した.
(3) 大豆加工食品中に残存するTIの多くは,加工工程中で加熱処理されていることからそのKt値を測定したところ,豆乳中TIはトリプシンのKm値を2倍にする,すなわちKt値は30unitであったが,他の食品中のTIは500unitまで添加してもトリプシンのKm値は変化せず,トリプシン親和性が著しく低下していることが推察された.
(4) そこでトリプシンとBAPAをあらかじめ反応させた溶液中に,食品中より抽出したTIを100unit添加したところ,豆乳中TIの添加によってトリプシンとBAPAの反応は停止したが,他の食品中TIの添加ではその反応に変化は見られなかった.
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© 社団法人 日本食品科学工学会

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