日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
グリシン, 塩化ナトリウム,エチルアルコール共存下における低温殺菌
堤 将和李 在根
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1988 年 35 巻 8 号 p. 545-551

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抄録

低温加熱食品製造に関する基礎実験として, 1% Gly, 2% NaCl, 2% EtOH共存下における低温殺菌について検討した.
(1) S. typhimuriumの場合,非加熱ではGly,NaCl, EtOHあるいはGlyとNaClとEtOH共存下においても本菌の増殖がみられた.
(2) GlyとNaCl共存の場合, 55℃で30分間の加熱でもS. typhimuriumは生残した.しかし, EtOH単独あるいはGlyとEtOH, NaC1とEtOH, GlyとNaClとEtOH共存下, 55℃で20分間以上加熱すると本菌の増殖は認められず,また生残菌も確認されなかった.
(3)上記薬剤共存下でS. typhimurium を55℃で30分間加熱し,菌体漏洩物質の測定を行った.その結果, GlyとNaClは菌体成分の漏洩を促進したが,EtOH は逆に阻害した.菌体成分の漏洩量と殺菌効果との関係はみられなかった.
(4) P. vulgaris, A. hydrophila, S. cerevisiae,K, fragilisは薬剤非共存下, 55℃で30分間の加熱で死滅した.しかし, E. coliとB. subtilisは同条件の加熱でも生残した.
(5) E. coliはGlyとNaCl共存下, 55℃で30分間の加熱で増殖できなかったが,菌は生残していた.GlyとNaClとEtOHの共存下,同条件の加熱で本菌は死滅した.
(6) B. subtilisはGlyあるいはGlyとEtOH,GlyとNaCl, GlyとNaClとEtOHの共存下, 55
(31)堤・他:薬剤共存下における低温殺菌551℃で30分間の加熱で増殖できなかったが菌は生残していた.この結果は,おそらく胞子の生残であろうと推定した.

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