1989 年 36 巻 2 号 p. 108-113
豚皮不溶性コラーゲンをペプシン処理を3回まで繰返して可溶化コラーゲンを調製し,そのマトリックス構築に及ぼす影響を調べた.その結果,
(1) ペプシン処理を3回繰返して調製した3種の可溶化コラーゲンのアミノ酸組成には大差がなかった.しかしペプシン処理を繰返すことにより,糖含量およびテロペプチドの切除の程度の異なる可溶化コラーゲンが調製できることを認めた.
(2) ペプシン処理回数の増大によってマトリックス構築速度および構築率は顕著に低下した.
(3) 3種のマトリックスは,いずれもnativeタイプの分子配列を示し,良く発達したネットワーク構造を示した.また酸可溶性コラーゲンに比べて熱安定性がやや低く,熱転移幅の広いマトリックスを構築した.さらにコラーゲン濃度,緩衝液濃度およびそのpHを調節することにより,特異な熱安定性をもったマトリックスが構築されることを認めた.