日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
茶飲料類に接種されたA型, B型ボツリヌス菌芽胞の動向
原 征彦渡辺 真由美阪ロ 玄二
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 36 巻 5 号 p. 375-379

詳細
抄録

清涼飲料として市販されている茶飲料類(乳または酸を含むものを除く)にボツリヌス菌芽胞を接種し,菌の増殖,毒素産生の有無を調べた.茶飲料としては紙容器入り紅茶飲料2種缶入り煎茶,缶入りウーロン茶の計4種を選んだ. A型ボツリヌス菌5株,同B型菌5株の芽胞を均等に混合し各飲料に接種し,嫌気状態下で一定期間保ち,保存後の菌数を計測したところ菌数の顕著な減少を認め,生残菌は全て耐熱性芽胞であった.保存後の各被験材料をマウス腹腔内に投与したがマウスの斃死はみられず,保存期間中に毒素の産生はないものと考えられた.各飲料に接種された芽胞数の経時的増減を調べたところ煎茶以外は1月以内に激減しやがて零になる傾向を示した.煎茶に関しては芽胞接種後加熱処理を加えたところ上記と同様の経過を示した.さらに紅茶飲料をタンニン画分と非タンニン画分とに2分し,それぞれに芽胞を接種したところ非タンニン画分では菌数の減少がみられなかったが,タンニン画分では菌数は急減した.以上の結果より,清涼飲料として標準的な茶抽出濃度をもつ低酸性の茶飲料類はボツリヌス菌芽胞に対する抗菌活性をもち,その活性はタンニン(ポリフェノール)成分に由来することがわかった.

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top