日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
血漿蛋白質のもつプロテアーゼ阻害活性の食品素材への利用
斎藤 昌義門間 美千子千國 幸一
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1992 年 39 巻 10 号 p. 901-906

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抄録

血漿蛋白質のプロテアーゼ阻害活性を,食品の加工中および貯蔵中におけるプロテアーゼによる品質低下の防止に役立てることを検討した.
1) 血漿蛋白質はトリプシン, α-キモトリプシン,エラスターゼを阻害したが,阻害活性は,同濃度の卵白粉よりも低かつた.
2) 血漿蛋白質をイオン交換クロマトグラフィーで分画したところ,阻害活性の高い画分を調製することができた.
3) 血漿蛋白質の阻害活性は酸に対しては不安定であった.また, 80℃ 30分間の加熱では, pH3, 7, 9いずれにおいても阻害活性は,約3分の1に低下した.ペプシンにより血漿蛋白質の加水分解を行ったが,阻害活性は約50%残っていた.
4) 以上のことから,阻害を目的とするプロテアーゼの性質を明らかにし, pH,加熱処理などの条件を適切に設定したり,分画により阻害活性の高い素材を調製することで,血漿蛋白質のプロテアーゼ阻害活性を利用した食品素材の開発が可能と考えられた.

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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