日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
シリカゲルを用いた脱水による魚類筋原繊維タンパク質の変性と水の存在状態に及ぼす糖の影響
稲田 徳彦市川 寿野崎 征宣平岡 教子横山 哲夫田端 義明
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1992 年 39 巻 3 号 p. 211-218

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抄録

単糖類(五炭糖,六炭糖),二糖類および三糖類をそれぞれMfに対して重量比で5%,あるいは添加量を1~10%の範囲で添加し,シリカゲルによる脱水変性の抑制効果と水の状態変化との関係について, MB Ca-ATPase活性を指標としたタンパク質変性度および低温示差走査熱量計で測定した不凍水量を比較した結果,次のことが明らかとなった.
(1) 糖類添加によるタンパク質脱水変性抑制効果は,添加量5%では,二糖類≧単糖類(六炭糖)>三糖類≧単糖類(五炭糖)であった.濃度による影響は,添加量8%ではシュクロース≧グルコース>キシロース≧ラフィノースとなったが,添加量が1~3%,あるいは5%添加で水分含量50%以下ではキシロースよりむしろラフィノースの方が高い抑制効果を示した.
(2) 糖類添加によるMf中の不凍水量は,添加量5%では二糖類≧単糖類(六炭糖)>三糖類≧単糖類(五炭類)の順であり,いずれも糖を加えない対照よりも多く,また,タンパク質変性抑制効果と一致した.添加濃度と不凍水の増加量の関係をみると, 1~5%添加ではシュクロース≧グルコース>ラフィノース≧キシロースの順に多くなるが, 8%添加ではキシロースとラフィノースとが逆転し,さらに10%添加ではキシロース≧シュクロース≧グルコース>ラフィノースの順であった.
(3) MB Ca-ATPase活性を指標とした変性抑制効果と低温示差走査熱量計で測定した不凍水量の間に高い正の相関関係が認められることから,糖の脱水変性抑制効果は,不凍水量と密接な関係を持つことが示唆された.
(4) 脱水変性抑制物質は,親水基を多数有し,溶解度が大きく,しかもメイラード反応に関与しない非還元糖が大きな抑制効果を示すことが示唆された.

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