種々の現行缶内面塗膜とレモンフレーバーとの関連を調べることを目的とし,以下のような分析及び統計解析処理を行った.塗膜を浸漬したレモンフレーバー溶液を加熱殺菌処理後,25℃で一週間遮光保存したものにつき,ポリマービーズを用いた吸着法により,溶液中のフレーバー成分を回収し,GC-MSにより定量分析を行った,得られた17成分のピーク面積比に対して,クラスター分析と主成分分析を適用したところ,次のような結果を得た.
1) クラスター分析では,塗料形態が水性タイプの塗膜サンプルグループと溶剤タイプの塗膜サンプルグループにほぼ分類された.
2) 主成分分析では,溶剤タイプと一部の水性タイプの塗膜サンプルグループと水性タイプの塗膜サンプルグループとにほぼ分類された.
こうして得られた塗膜タイプ別の分類は官能評価により質の違いが指摘されてきた事実と一致した.さらに主成分分析でグループ化される主要因となった第二主成分軸には,みかん果汁の貯蔵中の異臭成分として重要であるといわれているテルピネン-4-オールやα-テルピネオールの量が寄与していた.