一定条件で製パンした3種類のストレート法食パンについてCORNFORDら11)のモデルを用いて老化についての速度論的解析を行った結果,以下のことが判明した.
(1) 油脂にはパンの老化速度抑制効果はほとんどなく,モノグリのそれも老化速度を対照のパンの約6割に抑制する程度である.
(2) 油脂の老化(硬さの変化)抑制は,パンの内相構造の細密化による限界硬差(硬さの限界値と初期値の差)の低下効果である.
(3) モノグリの老化速度の低下は,主にパン中のアミロペクチンの老化速度の抑制効果であり,老化(硬さの変化)の極端な抑制にはデンプンの老化速度抑制以上に限界硬差の低下効果の寄与が大きく,その主要因はパン中のデンプンの糊化,溶出抑制による溶出デンプン量の抑制である.