日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
紅茶香気成分の比較分析
重松 洋子下田 満哉筬島 豊
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 41 巻 11 号 p. 768-777

詳細
抄録

エーテル:イソペンタン(6:4)を抽出溶媒とするポラパックQカラム濃縮法により,実際に我々が紅茶を入れるのとほぼ同じ条件で紅茶の香りを抽出・濃縮し得ること,このようにして得られたにおい濃縮物は減圧連続蒸留抽出(SDE)法で得られたムレ臭と強烈な渋いにおいを呈する濃縮物とは官能的にも化学的にも大きく異なることを明らかにした.
1. hexanol, hexenol, linaloolおよびgeraniolは,カラム法に比べてSDE法で数倍検出された.一方,α-terpineolおよびnerolは, SDE濃縮物でその含量が顕著に低かった.
2. SDE法では,リノール酸やリノレイン酸の酸化により生ずる各種の鎖状アルデヒドおよびbenz-aldehyde含量が顕しく高かった.
3. 鎖状のケトン類はSDE濃縮物で高含量を示したが, 2, 5-pyrolidinone誘導体およびβ-ionone誘導体は逆にカラム法で高含量を示した.
4. 7種類のラクトン化合物は,いずれもSDE操作中に激減あるいは消滅することが明かとなった.
におい濃縮法の違いにより,フレーバーインデックスは2.63(カラム法)から1.22(SDE法)に減少し,濃縮物のにおい特性に決定的な影響を及ぼすことが明らかとなった.

著者関連情報
© 1994 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top