栄養精神医学
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総説
抑うつ患者の便通と⾷事を外来でどう診るか —腸内マイクロバイオーム・⾷事介⼊の実践的視点—
奥平 智之
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2026 年 2 巻 1 号 p. 137-153

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抄録

[背景]⼤うつ病性障害は再発性で機能障害が⼤きく、過敏性腸症候群(IBS)などの機能性消化管障害や便通異常をしばしば併存する。両者は双⽅向的に関連し、抑うつ患者ではIBS の併存・新規発症リスクが約2 倍に⾼まる。腸-脳相関への関⼼は⾼いが、既存総説は分⼦機序に偏り、外来で便通と⾷事をどのように評価し⽀援するかという臨床的視点は⼗分でない。

[⽬的]腸内マイクロバイオームと⾷事に関する基礎研究、観察研究、介⼊研究、メタ解析、ガイドラインを批判的に整理し、抗うつ薬の消化器副作⽤(消化器症状、消化管出⾎、体重変化)と対応、腸内細菌との相互作⽤を含め、外来で⽤いやすい評価・⽀援の枠組みを提⽰する。

[内容]腸-脳相関は迷⾛神経、免疫・炎症、視床下部-下垂体-副腎(HPA)系、短鎖脂肪酸、トリプトファン代謝物、胆汁酸などを介すると想定されるが、多くは動物実験や横断研究に基づき、ヒトでの因果は限定的である。観察研究では健康的⾷事パターンと低い抑うつリスク、超加⼯⾷品と抑うつの正の関連が⽐較的⼀貫するが、相関は因果を意味しない。介⼊研究では、管理栄養⼠による地中海⾷型⽀援(SMILES、AMMEND)が抑うつを改善しうる⼀⽅、予防⽬的のMooDFOOD は陰性であり、単⼀栄養素補充(オメガ3)の効果は限定的である。サイコバイオティクスは⼀定の可能性を⽰すが、菌株・製剤は不均⼀で、糞便微⽣物移植は実験段階にとどまる。SSRI は消化管出⾎リスクをわずかに⾼め、NSAIDs 併⽤で増⼤する。実践⾯では、14 項⽬地中海⾷遵守スクリーナー(MEDAS)とブリストル便性状スケールによる短時間評価、多職種による協働ケア、動機づけ⾯接、⾏動計画、セルフモニタリング、和⾷を活かした段階的⽀援、消化器症状への具体的対応、特殊集団への配慮が現実的である。

[結論]外来で便通と⾷事を評価し⽀援することは実⾏可能で臨床的意義がある。ただし、⾷事・腸内細菌への介⼊は薬物療法や精神療法を補助するものであり、代替ではない。エビデンスの確実性と相関・因果の区別を明⽰した慎重な運⽤が求められる。

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