抄録
好むと好まざるとにかかわらず、権力者の行動に応じて服従者が特定の行動を行わざるをえないこと──これが権力の本質である。この見地に立ってわれわれは、権力を自由の不均等な配分として定義することを提案する。たとえば上司に命令する自由があり、上司が命令したならば部下はそれにしたがうという以外に行為の可能性をもたないとき、上司は部下に権力をもっているのである。この提案は袋小路に入っていた権力論に、新たに制度という視点を導入する。誰が・どんなときに・どのような行為の可能性をもっているかは、制度によって決っている。したがって権力は制度の一部として記述され、制度の集合から権力構造の集合への関数を発見することによって権力を説明・予測する可能性を開く。その一端としてここでは(1)各人が自由であるような制度のもとでは権力は存在しない、(2)任意の個人が行為を変更するならば、それに応じて他の全ての個人もまた行為を変更せざるをえないような拘束的な制度のもとでは、全体集団が他の全ての集団・全ての個人に権力を及ぼすという、全体主義的権力構造が成立する、という定理を主張する。