抄録
West症候群 (以下WS) 61例 (生存例48例, 死亡例13例) の精神発達, 運動発達, 発作についてそれぞれの予後を検討した.
精神発達予後では正常または境界例14例 (23%), 知能障害例47例 (77%) で, そのうち死亡例13例はいずれも高度の知能障害を有していた. 運動発達予後では正常例20例 (33%), 運動障害例41例 (67%) であった. 発作予後では消失例23例 (38%), 存続例38例 (62%) で, 発作消失例は精神発達, 運動発達の面でも予後がよかった. 追跡時脳波は52例について検討したが, 正常または境界例 (以下n. or b.) 8例 (15%), 局所所見 (以下f.) 19例 (37%), 中心脳性所見 (以下c.) 25例 (48%) であった. 追跡時脳波と上述三者の予後との間には密接な関係があり, n. or b.≧f.>c. の順で予後がよかった. 初回時脳波からWSの原因及び予後を推測する事は不可能であった. しかし経時的に脳波所見の変化を追跡すると治療開始後3ヵ月してなおc. を示す例は最終時迄継続してc. を示し, 従ってその例は予後不良と推測する事が可能であった.
次に精神発達予後に影響を及ぼす諸因子について検討した. 特発性WS (24例) は症候性WS (37例) より予後良好であった (P<0.001). 特発性WSでは発症年齢の予後への影響は認められなかったが, 症候性WSでは発症年齢が小さい程予後が悪かった (P<0.005). 早期治療については特発性WSでは有効であった (P<0.05) が症候性WSでは有効性は認められなかった. ACTHの早期治療開始による予後への効果, 並びにACTH療法と他剤療法との予後への効果の差については, 特発性WS, 症候性WSいずれにおいても有意性は認められなかった. 即ちACTH療法がWSに対するfirst choiceであるという積極的な根拠は得られなかった.