聴性脳幹反応 (ABR) は検査に協力できない患者の聴力障害の早期発見や, 脳幹部の神経学的異常の発見などの課題に対して有力な検査法である.各波潜時や振幅は, 年齢, 性別によって異なるので, 各検査室において, 正常値を作成して基準とする事が望ましい.ABRの聴覚検査への応用と, 各種神経疾患におけるABRについて述べた.蝸牛や聴神経の機能が廃絶しているdeafnessの場合はABRによる情報は得られない.また聴覚路の, 脳幹より高位レベルの電気生理学的状態や, 被検者が聴覚情報を理解出来るか否かについての情報も得られない.ABR上認められる異常は, 個々の疾患と特異的に対応しているものではない.診断は臨床的状態や, その他の検査結果を総合して注意深く行う必要がある.