1998 年 30 巻 6 号 p. 512-516
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA) の1家系の遺伝子診断を行った.父親は40歳頃より歩行障害で発症し, やがて痴呆, 舞踏アテトーゼを示した.次男は17歳時に痙攣で発症し, 四肢のミオクローヌスを主体とする発作や, 全身強直間代性痙攣を反復した.DRPLA遺伝子解析で, 父親, 次男にCAGリピートの伸長を認めた.長男の発症前診断は, 彼とその配偶者のインフォームド・コンセントを得たのち, 実施した.長男はCAGリピート伸長がなく, 患者ではないと診断できたので, 彼にそのことを告げ, 不安を取り除いた.今回のケースは発症前診断がDRPLA家系の非患者の精神衛生の改善に有用であることを示唆している.