オレオサイエンス
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特集総説論文
液体の潤滑性と分子レベルでの機構解明
水上 雅史粕谷 素洋栗原 和枝
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2015 年 15 巻 5 号 p. 205-211

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抄録

固体表面間の液体による潤滑の研究において,著者らが開発してきた共振ずり測定法は非常に有効な手法である。共振ずり測定法は,2つの表面間の距離 (潤滑液体層の厚み) をμmから接触までnmレベルの分解能で連続的に変えて,摩擦・潤滑を評価できる。従って,特に,潤滑液体層が薄くなり,表面の突起部が部分的に接触し始めて現象が複雑となる境界潤滑の研究に有効である。本稿では,共振ずり測定法の原理と特長を説明し,この方法を用いた液体ナノ薄膜の潤滑特性を評価した最近の我々の研究を紹介する。(i) 雲母表面間の4種類のフェニルエーテル系潤滑油は,表面間距離が20〜10 nm以下で著しい粘度上昇を示し,2〜3 nm以下ではバルク粘度が最も低い潤滑油が最も高い粘度を示すことを明らかにした。(ii) シリカ表面間の水は,シラノール基密度が高いほど耐荷重性・潤滑性が向上することを明らかにした。(iii) アニオン種の異なるイミダゾリウム系イオン液体においても,シリカ表面間のナノ空間中では,バルクと粘度の大小関係が逆転することを見いだした。

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© 2015 公益社団法人 日本油化学会
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