オレオサイエンス
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特集序言
特集総説論文
  • 矢野 貴久
    2024 年 24 巻 8 号 p. 333-339
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/08
    ジャーナル フリー

    国際航空分野での温暖化対策の一つとして,IATA(国際航空運送協会)やICAO(国際民間航空機関)により,持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel:SAF)の導入拡大に向けた目標設定,制度構築・運用,利用の枠組みが定められ,各国で研究開発や規制などの各種施策と連動した商用化が進みつつある。SAFは非化石資源由来で様々な変換プロセスを経て製造される。航空機の燃料系統やエンジンの改良およびインフラの変更をせずに,通常の運航をしながらCO2排出量を削減できるという大きな利点がある。現状では,カーボンニュートラルに向けた需要量に対する生産量には大きなギャップがあり,製造コストは化石資源由来のジェット燃料より高く,原料の安定的・効率的な確保などの点で課題がある。日本における原料調達,製造,空港への供給までのサプライチェーンの構築,環境負荷低減効果の認証と検証などは途上であるが,航空分野ではSAFの活用はCO2削減に最も効果が高いとされており,今後はSAFの利用が必要不可欠とされている。本稿では,SAFの一般的概要として,SAFの導入の背景,規格・認証制度,SAFの原料の種類,製造プロセス,現在の開発動向,原料開拓を概観する。

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  • 越川 翔生, 西田 孝伸, 松永 興哲, 谷利 駿
    2024 年 24 巻 8 号 p. 341-349
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/08
    ジャーナル フリー

    運輸部門の中でも環境負荷の高い航空分野では,従来のジェット燃料からSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)への代替が進んでおり,空のカーボンニュートラルが加速している。本総説では弊社が目指す炭素源循環社会の実現に向けた取り組みと国内外におけるSAFの研究開発動向について述べるとともに,特に弊社のREVO方式急速接触熱分解(R-CFP:REVO-Catalytic Fast Pyrolysis)技術について紹介する。R-CFP技術では廃食用油に加え,さらに賦存量の多い木質系バイオマスや廃プラスチックへと原料を拡大し,SAF等低炭素燃料を製造する高度資源化プロセスの確立および分解活性の長期安定化と低コスト化を図っている。R-CFP技術を用いることで高い軽質油(ナフサ+SAF+軽油)収率および高SAF選択率が得られる。

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  • 寺井 聡
    2024 年 24 巻 8 号 p. 351-358
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/08
    ジャーナル フリー

    国際航空分野は,2019年時点で世界全体の約1.8%に相当するGHGを排出しているが,2050年までに同分野でのGHG排出量を実質ゼロにすることが各国間で合意されている。GHG排出削減の切り札として持続可能な航空燃料SAFが注目されていて,今後,世界各地で膨大なSAFの需要が見込まれる。
    GHG削減効果が公に認められているSAF製造法の内,FT合成技術にて得られるSAFは,多様な一次原料から製造が可能な汎用性の高い技術であり,かつ,他の製造法に比べてGHG削減効果のポテンシャルが高い特徴がある。
    SAF製造では,LCA的な見地からバイオマス等の非化石由来原料や再エネ水素を原料とする必要があるが,原料輸送の観点から一般的な石油精製プラントの規模感と異なり,地消型の中小型プラントが適した技術となる。この規模に特化したFT合成技術も開発されていて,国内でもNEDOの事業で一貫製造実証と商業フライトへの実機給油が完了し,社会実装への検討が継続されている。
    日本国としても国際合意目標を達成するためには,戦略的にGHG削減効果の高いSAFを確保していくことが重要であり,SAFの環境付加価値の適切な評価も含め,SAFの利用・供給拡大に向けた事業支援策の検討が進められている。

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  • 野澤 伊織
    2024 年 24 巻 8 号 p. 359-365
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/08
    ジャーナル フリー

    近年,地球温暖化対策として,世界的にCO2削減が取り組まれており,その内の一つとして微細藻類(以下,藻類)によるCO2の直接利用が議論されている。藻類生産は農業による農作物の生産と比較し,その高生産性,省資源性,高汎用性という優位性が挙げられるにも関わらず,その産業利用は限定的である。藻類の産業利用が拡大しない主要な理由として,「大規模藻類生産の欠如」および「藻類の商業用途の多様性欠如」が考えられる。大規模な藻類生産は藻類種や生産地,生産規模に関わらず,50年以上前から主にオープンレースウェイポンド(以下,ORP)が用いられてきた。ORPの他にも様々な生産手法があるが,そうした手法を用いた実証が大規模に実施された例は限られている。結果として,ORPを用いて安定生産可能な条件を除き,藻類生産が拡大していない。藻類生産拡大には,目的に応じた生産方式の開発や実証が必要である。フラットパネル型フォトバイオリアクター(以下,FP-PBR)を用いた生産もその内の一つである。現在,マレーシアにおいて,FP-PBRを用いた大規模な藻類生産(生産面積約5ha)のNEDO実証事業が,株式会社ちとせ研究所(以下,ちとせ研究所)により進められている。また,藻類の商業用途の多様性拡大を目的として,MATSURIプロジェクトがちとせ研究所によって立ち上げられ,分野横断的な商業用途の開発も平行して進められている。

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