2016 年 16 巻 7 号 p. 337-344
トラネキサム酸はプラスミノーゲン活性阻害剤としてスキンケア化粧品に配合されている。しかし,その親水的な特性により経皮吸収性が低く,その改善のためにアルキル鎖を修飾したトラネキサム酸セチルエステル塩酸塩(TXC)が開発された。TXC- 水系の相挙動および自己組織体の構造解析から,TXCは分子間の強い引力相互作用により高い自己組織化能を有することが明らかにされた。また,長鎖アルコールとの混合系で安定なαゲルを形成することができる。さらに,化粧品用途を目的に調製したαゲル製剤は,両連続型のスポンジ状構造(BAG相)を構築し,その構造を維持したまま様々な油を乳化できることが分かった。本稿では,TXCの物理化学的性質とαゲルの階層構造について概説し,αゲル構造がもたらす皮膚浸透性と官能特性について紹介する。