2022 年 22 巻 6 号 p. 265-276
最近,ラマン分光法が装置やスペクトル解析で大きく発展し,従来の化学,物理学,工学分野だけでなく,生命科学,医学,薬学,農学,食品科学などの幅広い分野で用いられるようになった。ラマン分光法の優れている点は,非破壊,無侵襲分析が可能であるばかりでなく,分子の構造や物性,反応に関する知見も与えることである。本総説では最初に,ラマン分光法の原理や特徴について概説し,そのあと脂質のラマンスペクトルについて説明する。さらにラマン分光法を用いた食品科学,健康科学,医学分野における脂質分析の現状と可能性について述べる。