2026 年 26 巻 7 号 p. 287-291
本稿では,データ科学が研究開発に不可欠となる中で,材料化学分野における新たなアプローチとして,マルチモーダルAIと自律自動実験を紹介する。マルチモーダルAIは,スペクトルや画像,組成,プロセス条件などの多様なデータを統合的に解析することで,単一データでは捉えきれない材料の構造や特性の理解を可能にする技術である。筆者らはこの概念を材料分野向けに再定義し,複数の材料系へ展開することで,その有効性を示してきた。一方,自律自動実験は,リアルタイムの計測データに基づいて意思決定を行い,実験条件を自律的に更新することで,効率的な探索と最適化を実現する枠組みである。特に,複雑かつ事前情報の乏しい材料プロセスにおいて有効性が示されている。これらの技術は,単なる自動化や汎用AIではなく,材料・プロセス・計測を横断的に理解した上で設計することが重要であり,その活用には専門家の知見が不可欠である。今後の研究開発においては,技術に加えて人材やコミュニティの整備を含めた総合的な取り組みが鍵となる。