耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
臨床
中耳より発症したinverted papillomaの1症例
石垣 高志谷口 雄一郎小島 博己森山 寛田中 康広
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 55 巻 4 号 p. 235-240

詳細
抄録

今回我々は中耳に発症したinverted papillomaの1例を経験したので報告する。
症例は44歳女性, 左耳の聴力低下を自覚し近医を受診。滲出性中耳炎の診断にて左耳の鼓膜切開を施行したが, 中耳腔内にポリープ様の腫瘤を認め, 生検の結果papillomaと診断されたため当院へ紹介となった。画像診断では造影MRIにおいて腫瘍は鼓室内に限局し, 耳管などへの進展は見られなかった。腫瘍は鼓室内に限局していたため外耳道後壁は保存し, 段階手術を選択した。術後病理はinverted papillomaであった。術後2年8ヵ月の期間外来にて経過観察をしているが, 鼓膜所見および画像所見ともに再発を疑う所見を認めていない。
中耳に発症したinverted papillomaは極めて稀であり, 現在までに15例の報告しかない。鼻副鼻腔発症例に比べると中耳発症例では再発率, 悪性化率ともに高い傾向を認めた。そのため今後外来での厳重な経過観察が必要と考えられた。

著者関連情報
© 2012 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top