耳鼻咽喉科展望
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臨床
救急外来におけるめまい患者の頭蓋内疾患予測因子の検討
宮下 文織森 恵莉柳 清
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2017 年 60 巻 2 号 p. 76-82

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抄録

 めまいは耳鼻咽喉科外来や救急外来 (Emergency room: ER) でよく遭遇する症状の一つであるが, 原因疾患が多岐にわたるため,診断に苦慮することがある。 めまい症状を訴える患者の中には致命的となりうる脳血管疾患 (Cerebrovascular disease: CVD) や心疾患も含まれており, 迅速な診断が必要とされる。 来院時点での患者背景や臨床症状から病態を予測し, 画像検査を行うタイミングを逃さずに早期発見できれば,早期治療につながる。

 今回われわれは, 聖路加国際大学 ER にめまい症状を訴えて来院した患者について原因疾患の割合を調べ, 特に CVD に注目して患者背景と臨床症状のそれぞれに分けて統計学的検討を行ったので報告する。 2011年1月から12月までの1年間にめまいを主訴に当院 ER を受診し, 頭部 CT または頭部 MRI を撮像した364名を対象とした。

 その結果, 末梢性めまいが220名 (55%), CVD が23名 (6%), その他50名 (13%), 原因不明が71名 (19%) であった。 23例の CVD の内訳は, 大脳梗塞が7名 (30%), 小脳梗塞は6名 (26%), 一過性脳虚血発作 (Transient ischemic attacks: TIA) は3名 (13%), 脳幹梗塞は3名 (13%), 脳幹及び小脳梗塞は2名 (8%), 脳幹, 小脳, 後頭葉梗塞は1名 (4%), 椎骨脳底動脈狭窄は1名 (4%)であった。 CVD を認めた23例と CVD を認めなかった341例において CVD 発症の予測因子について統計学的検討を行った。 その結果, 患者背景においては高齢, 飲酒歴, 脂質異常症が, 臨床症状においては神経学的異常の存在, 浮動性めまいが CVD によるめまいの独立した予測因子であった。 めまい症状を訴えて来院した高齢患者のうち, 問診で飲酒歴を認める患者は約5倍, 脂質異常症を認める場合は約3.5倍のリスクがあることを念頭に置き, 当然ではあるが神経学的異常を認めた場合は直ちに MRI による精査が必要と考えられた。

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