2017 年 60 巻 4 号 p. 174-180
サイトメガロウイルス cytomegalovirus (CMV) は, 通常幼少期に不顕性感染した後に宿主に潜伏感染し, 多くは無症状に経過する。 妊婦に CMV が初感染した場合ないし何らかの原因で CMV が再活性化を起こした時, 経胎盤的に胎児に CMV 感染を惹起する。 この病態が先天性 CMV 感染症であり, 本邦では年間約3,000人の児が出生するといわれる。 今回われわれは, 2歳9ヵ月の先天性 CMV 感染児を経験した。 新生児聴覚スクリーニング検査では異常は認められず, その後の言語発達にも問題はなかったが, 幼稚園入園後に難聴を指摘された。 最終的には乾燥臍帯組織から CMV-DNA が検出されたことにより, 先天性 CMV 感染症による感音難聴と考えた。 典型的な兆候に乏しかったため, 診断に時間を要した。 近年, 妊娠可能年齢の女性における抗 CMV 抗体保有率は減少していることから, 小児期における感音難聴の鑑別疾患の1つとして本疾患を考慮すべきと考えた。