2025 年 35 巻 2 号 p. 63-67
聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)は前庭神経のシュワン細胞から生じる疾患で,感音難聴や耳鳴,めまいが主な症状である.高齢化に伴い患者数が増加しているが,腫瘍による聴力障害メカニズムや,腫瘍の発生・増大メカニズムは依然として不明な点が多い.私たちはこれまで聴神経腫瘍の聴力障害メカニズム解明や,新規治療法,新規診断法の開発に取り組んできた.摘出した聴神経腫瘍細胞の培養系を用いて,細胞外小胞に含まれるmiRNAが聴神経障害を引き起こすことを示した.さらに様々な薬剤の腫瘍増殖抑制効果を検証した.また腫瘍サイズや聴力と相関するバイオマーカー候補の同定も行った.聴神経腫瘍は決して稀な疾患ではなく,多くの症例は手術や放射線治療の適応とならず,いわゆる“wait & scan”となる.聴覚やめまいを専門とする私たち耳科医が積極的に関わっていくべき疾患であると考えており,これからも研究を進めていきたい.