2020 年 23 巻 6 号 p. 812-817
腸間膜血管損傷による小腸壊死は時に経験する。今回われわれは,受診が遅れたために誤嚥性肺炎の合併を引き起こし重症化した1例を経験した。症例は70歳代,男性。来院2日前に腹部を打撲し徐々に腹痛が増悪。頻回嘔吐をきたし体動困難となり救急搬送となった。 初療時より,右下腹部に反跳痛を伴う最強圧痛点を認めた。腹部造影CT検査にて小腸腸間膜血腫と腸管壁造影不良域を認め,小腸壊死・汎発性腹膜炎と診断した。CT検査施行後にショックを呈し,緊急開腹術を施行した。術中所見で腸間膜血腫に伴う小腸壊死を認め,小腸部分切除術を行った。腹部術後経過は良好であったが,来院時より重度の誤嚥性肺炎を伴っており,術後62日目に死亡退院した。病理解剖を行い腸管損傷の治癒を確認した。鈍的腹部外傷では時間経過により症状が顕在化することがしばしば認められるため,慎重な経過観察による早期診断と適切な治療介入が肝要となる。