DNAコンピューターやDNAナノテクノロジーを中心に,最近の分子コンピューティングの研究動向について概観する.分子コンピューティングの研究は「計算論的ナノテクノロジー」というべき方向へ展開している.「計算論的」という言葉には二つの意味がある.一つは,分子反応に対して「計算」という視点を与え,情報処理機能をもった分子システムを構築することである.もう一つは,分子システムの構築において,各種の情報処理技術を活用することである.特に,分子システムのシステマティックな設計論を,「分子プログラミング」と呼ぶ.