応用物理
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解説
実験とシミュレーションによる半導体結晶成長の欠陥生成メカニズム予測
柿本 浩一
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2020 年 89 巻 3 号 p. 132-138

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抄録

シリコン(Si)やSiC,窒化物半導体に代表される半導体は,それ自身がもっている結晶特性を十二分に発揮していないのが現状であり,さらなる特性向上が求められている.このためには,結晶中に導入される転位,不純物,そして結晶多形などの欠陥密度の制御が必須である.本稿では,結晶成長中と冷却中に導入される格子欠陥密度低減を目的として,実験とシミュレーションの融合の下に構築した結晶成長プロセスの提案に関する研究成果の紹介を行う.単結晶中の結晶欠陥は,一般に結晶成長時のみに形成されるのではなく,冷却中においても生成される.このために,欠陥分布の解析には結晶成長中,そして冷却中を考慮に入れた解析が必要であり,非定常で3次元空間を考慮に入れた総合的な熱流動解析と欠陥解析が必須となる.また,欠陥密度を定量的に予測するためには,実験結果との定量比較を行うことが必要であるが,これは高精度の予測手法の確立により達成できる.昨今の計算機の計算能力と計算アルゴリズムの発達により,結晶欠陥をある程度定量的に予測することは可能になった一方,さらに高精度で予測するには原子レベルと連続体レベルにおける欠陥解析手法の統合が重要な課題となっている.本稿では,欠陥形成の解析例について,原子レベルと連続体レベルの現象の統合に関する研究結果に加え,シミュレーション結果と実験結果の解析の融合に基づいた欠陥予測の将来展望も解説する.

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© 2020 公益社団法人応用物理学会
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