2022 年 91 巻 3 号 p. 144-150
極低電力エレクトロニクス応用に向け,非常に急峻(きゅうしゅん)なオンオフ特性をもつ“PN-Body Tied SOI-FET”と命名した電子デバイスを提案している.現在の集積回路で使われている電子デバイス(MOS-FET)がもつ物理限界を,はるかに凌駕(りょうが)する急峻な特性を5~6桁の電流領域で示す.この電子デバイスの着想と動作原理,研究状況を紹介する.極低電力CMOS回路応用に向け,NMOS/PMOSの動作,さらに,CMOSインバータ特性を示す.特に,インバータ特性では上辺下辺とも直角に見える伝達特性を確認している.これは0.1V以下の極低電圧でも回路動作する可能性を示唆する.また,環境電磁波発電への応用研究も示す.通常のダイオードでは困難な微小振幅(10mV)での整流を確認している.さらに,最近行っている単デバイス・ニューロン機能への展開も紹介する.極低電力集積回路の基本デバイスとするには,まだ,重大な課題も抱えているが,このデバイスが示す興味深い特性に関心をもっていただければ幸いである.