2022 年 91 巻 3 号 p. 155-159
シリコン(Si)の熱酸化過程は,①酸化性分子の酸化膜中拡散,②界面での酸化性分子とSiの反応,③反応に伴う界面での格子間Si原子の発生と輸送と酸化吸収,④酸化された部分の体積膨張と粘性流動と変形,の4つの過程から成っており,これらの過程全てが④によって発生する応力分布の影響を受けて抑制されたり促進されたりし,それがまた応力分布自体に影響を与え,酸化過程全体の進捗(しんちょく)も左右する.平坦なSiの熱酸化ではこのような複雑さは目立たず一見①と②だけで簡便に理解できるように見えるが,Si立体ナノ構造の熱酸化になるとその複雑さがたちまち露見する.本稿では,Si熱酸化過程のこのような微視的な観点からの全体像に関して我々の研究を中心に紹介する.