1分子酵素反応検出に基づくデジタルバイオ分析法は,微小リアクタ技術を用いて生体分子を高感度で定量的に計測する新しいバイオ分析法である.2005年に初めて報告されて以来,その汎用(はんよう)性の高さからさまざまな種類のデジタルバイオ分析法が開発されている.代表例は,デジタル酵素結合免疫吸着測定法(デジタルELISA)である.主に,疾患マーカやウイルスの超高感度検出を目的として開発された.その後,新しい微小リアクタ技術の出現により,測定対象は単純な酵素から膜トランスポータ,あるいは無細胞遺伝子発現のような複雑なシステムへと拡大している.さらに,酵素分子の不均一性や分子間個性を評価する手法も開発され,その適応範囲は単なる高感度検出の枠を超えて広がっている.本稿では,デジタルバイオ分析法の基本概念を紹介し,さまざまなデジタルバイオ分析法を紹介する.最後に,デジタルバイオ分析法の今後の展望について述べる.