スマホなどのサポートによるセルフSST法の開発（1）～ソーシャルスキルの「通信教育」の可能性～

抄録

久木山（2005）は，大学生を対象にソーシャルスキルを高めようとする意欲とソーシャルスキル向上との関連を検討し，基礎的なものについては向上がみられるが応用的なものは意欲を高くもつだけでは向上しにくいことを見出していた。しかし，向上法を丁寧に説明した書籍や資料の提供やスマホを利用した「通信教育」的なサポートなどを行うことで，個人では向上させにくい高度なソーシャルスキルの向上を実現できる可能性が存在する。そのため，本研究では「通信教育」的手段によるソーシャルスキル向上に関する調査を大学生126名を対象に行った。

ソーシャルスキルの向上に対して，全般的な向上の見込みと書籍などによる「通信教育」的手段による向上の見込みをそれぞれ1項目（10件法）で尋ねたところ，全般的な向上の見込みの平均が7.71（SD＝1.44），「通信教育」的手段の平均は6.46（SD＝1.97）であり，「通信教育」的手段のほうが向上の見込みが悪いことが確認された（t_（125）＝6.22，p＜.01）。自由記述の内容を検討すると，「通信教育」的手段に向くソーシャルスキルの存在や，「通信教育」的手段であるからこそ可能となるソーシャルスキル向上の存在なども示唆されていた。