主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
本研究では,他者へのうつ病の診断名(以下,うつ病ラベル)の有無,他者との関係性(初対面,友人,家族)の違いが,対象者の評価する原因帰属,原因帰属次元,感情,行動反応という責任帰属過程の諸変数に与える効果を検討した。方法として,他者から卒論の進捗について相談される場面を想定し,二要因混合計画の分散分析を行った。結果,うつ病ラベルがあると,対象者は他者の問題を病気だと帰属し,他者自身では統制不能だと判断することが示された。関係性においては,家族や友人は,初対面と比べて,相談内容が深刻であり,個人への責任が低く,より多くの対処行動をとることが示された。また,うつ病ラベルのある初対面の他者から相談を受けた対象者は,友人,家族の場合と比べて,問題を病気だと判断されず,深刻だと判断されないことが示された。したがって,うつ病ラベルがあると対象者は他者の問題を病気と捉え,統制不可能だと判断するが,他者への責任性や問題の深刻度,感情,行動は関係性により変わることが明らかになった。今後は,性差や属性を統制して,うつ病ラベルと関係性による責任帰属過程モデルを検討する必要がある。