1993 年 42 巻 p. 181-184
近年,気道,胆道への応用が数多く報告されているGianturco型self expandable metalic stent(EMS)を,食道癌術後の移植遊離空腸に対して用いた。症例は70歳女性。頸部食道癌のため,下咽頭,頸部食道,喉頭切除術,遊離空腸再建術を行った。術後縫合不全を合併し,その後,移植空腸は8cm長にわたり全周性狭窄となった。頻回のバルーン拡張術を施行したが,狭窄は改善せず,Gianturco型self EMS(ϕ15×50mm 2個)を挿入したところ,嚥下困難は速やかに改善した。しかし,2週間ほどでステント連結部から粘膜組織が増生し,膜様狭窄を呈した。再度同型ステントでの拡張を試みたが,狭窄部は拡張せず,食道挿管をやむなく併用した。EMSによる拡張は安全かつ容易で,効果的な治療方法である。従って,今後EMSの形状に粘膜増生を防止するような工夫を加えることにより,消化管病変への応用が可能と考えられる。