消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
胃癌のレーザー治療中に発生した胃悪性リンパ腫の1例
半田 豊緑川 昌子篠原 聡葛 爾傑森田 重文大野 博之斎藤 徳彦吉田 肇松井 秀雄滝沢 千晶高瀬 雅久三坂 亮一川口 実斉藤 利彦
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キーワード: 胃癌, 胃悪性リンパ腫
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1993 年 42 巻 p. 206-208

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抄録

 症例は72歳男性。検診にて胃の異常を指摘され当科を受診した。噴門部のⅡaと診断し,手術を勧めたが拒否し,明らかな遠隔転移の所見を認めなかったため,レーザー治療の適応として,以後6年間照射を行った。その結果,明らかな増大傾向などなく,経過良好と考えられた。その後,老人性痴呆などが出現したため,治療の継続が困難となり,年1回の内視鏡的経過観察とした。治療中止後2年目に,癌巣と離れた胃体部に巨大な潰瘍性病変を認め,生検の結果T cell typeの悪性リンパ腫と考えられた。また全身性のリンパ腫を疑う所見は認められず,胃原発のものと思われた。本症例は,胃癌の経過観察中,胃原発の悪性リンパ腫の発生をみたもので,両者の因果関係は不明であるが,癌の存在に対する異常な免疫反応の結果,悪性リンパ腫が発生したという可能性も示唆され,共存腫瘍の発生を考えるうえで興味深い1例であると思われる。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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