消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
急性腐蝕性食道炎の基礎的,臨床的検討―ウサギ内視鏡所見と組織所見を中心に―
平川 恒久香川 隆男廣田 薫末岡 伸夫小林 正文永井 正彦桑名 壮太郎劉 賓
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1993 年 42 巻 p. 58-62

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抄録
 腐蝕性食道炎の内視鏡検査は,早期に安全に施行されるようになった。しかし,その裏付けとなる組織学的検討は少なく,塩酸,水酸化ナトリウム,パラコートによりウサギ実験モデルで食道炎を作製し,内視鏡所見,組織学的検討を施行した。さらに塩酸,水酸化ナトリウム含有の家庭用洗剤も加え検討した。臨床例の腐蝕性食道炎とも比較した。塩酸は低濃度で障害はほとんどないが,高濃度になるほど障害は高度になり,濃度依存性に障害程度が強くなった。水酸化ナトリウムは低濃度でも障害は塩酸に比較し高度で,深部まで認められた。パラコートの内視鏡的所見は酸,アルカリに比較して強くはないが,組織学的に障害は深層まで存在していた。家庭用洗浄剤の検討で,界面活性剤のみでは障害はほとんどなく,塩酸含有剤の障害は,同程度の濃度の塩酸よりは強度であったが,水酸化ナトリウム含有剤では同程度であった。内視鏡所見として,塩酸は濃度により粘膜の色調が正常,粘膜混濁,白濁と変化し,水酸化ナトリウムは濃渡に関係なく白濁と白苔が認められ,パラコートは軽度の粘膜色調の混濁のみであった。臨床例の内視鏡所見と実験モデルの内視鏡所見は類似点が存在したが,臨床例の障害程度の方が条件は異なるが高度であった。
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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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