消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
急性に経過する逆流性食道炎23例の検討
横山 孝典岩端 隆彦細貝 浩章山崎 忠男野ツ俣 和夫伊藤 慎芳桜井 幸弘多賀須 幸男安部 孝池上 文詔
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1993 年 42 巻 p. 63-66

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抄録

 一過性の激しい逆流により生じた,急性に経過する逆流性食道炎23例について検討した。活動期の十二指腸潰瘍による幽門狭窄,急性胃粘膜病変,アルコール依存症の過飲後の激しい嘔吐により,胃液の逆流が急激におきたときにみられる。内視鏡的特徴として,発赤,びらん,出血などが,下部食道を中心に全周性,表在性にみられ,通常の逆流性食道炎の病期分類に当てはめることができない。治療としては,H2受容体拮抗薬をはじめとする各種薬剤の投与や生活指導を行っても治癒しないことが多い通常の逆流性食道炎に反して,一過性の原因による激しい胃液の逆流に伴う食道炎は,加療によりその原因が解除されれば,速やかに治癒する。この2つの予後が非常に異なる食道炎を,一括して逆流性食道炎と称すると,例えば薬剤の効果検定を試みるときなどに不都合が生じる。そこで,これを急性逆流性食道炎として分離することが適切であると思われる。病理学的総論でいう“急性”には,症状が激しいことと経過が早いことの意味があり,この病態にふさわしいと考えられ,このことより新しい概念として“急性逆流性食道炎”を提案した。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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