2017 年 38 巻 5 号 p. 226-231
汎用ワークステーションによるフェノール樹脂の大規模分子動力学(MD)シミュレーションを実現するため,ユナイテッドアトムモデルを用いた反応MD シミュレーション手法を開発した。フェノールとホルムアルデヒドの縮合反応をモデル化し,フェノール核のortho およびpara 位の反応速度定数比を考慮したシミュレーションを行った結果,反応率α=0.85 の架橋ネットワーク構造を得た。ゲル化点はα=0.58 であった。反応由来の局所応力を減らすため,反応速度を遅くし,反応粒子の幾何学配置制約も課した。また300 K における応力歪解析の結果,引張弾性率はαの上昇とともに増加し,α=0.85 において4.5 GPa となった。先行研究における実験結果や大規模全原子MD シミュレーション結果との良い一致が得られ,本粗視化手法の有効性が確認された。